天然実録05 カレイライス
休日に急にお腹の調子が悪くなって、救急外来を受診した時のこと。
診察室に入ると学校の教室くらいの空間にベッドがいくつか並んでいて、奥の方に一人だけ別の人が寝ていた。その人とは反対側のベッドに誘導されベッド前の椅子に腰かけると、看護師さんが後ろに立ち正面にお医者さんが座り問診が始まった。
その日の担当はおそらく20代と思われる、やや細身で丸メガネをかけた真面目そうな男のお医者さんだった。
いつから痛いのかとか、下痢はあるかなどの基本的な質問から始まった。腹痛となれば食中毒などは当然可能性としてあるわけで、食事についても聞かれた。
「最後の食事は何時に何を食べましたか。」
「昨夜20時に定食屋に行ってカレイ ご飯 味噌汁を食べました。」
「カレーライスと味噌汁ですね。」
「いえ、カレーライスではなくカレイです。」
「ライスじゃないカレーですか。むむむ。」
そして数秒間の沈黙ののちハッと目を見開いて、
「ああ、カレーじゃなくて魚の方のカレイですか。」
お医者の頭上にピコーンと光る電球を幻視し、後ろにいた看護師さんたちは大爆笑。こっちまでお腹の痛いのも忘れて笑ってしまった。なんか診察室が和んだわ。
医者は一瞬バツの悪そうな顔をしたもののすぐに気を取り直し、水をいつ飲んだかの質問を始めた。この辺の切り替えの早さはさすが天然と言うべきかさすが医者と言うべきか。
ちなみにその後入院、最終的には手術までする羽目になったというちょっと笑えないエピソードがついてきたりもする。
あれ、前回に続いて天然の医者の話になってしまった……
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